建設業などを営んでいると、「資材を置く場所が足りなくなったので、近くの農地を資材置場として利用したい」ということがあります。
また、現在は農地として利用していない土地を所有している方が、建設会社などから「資材置場として貸してほしい」と相談されることもあるでしょう。
しかし、登記上の地目が田や畑である土地や、実際に農地として利用されている土地を資材置場として利用する場合には、原則として農地転用の手続が必要です。
「建物を建てるわけではないから大丈夫だろう」と考えて、先に砂利を敷いたり資材を置いたりしてしまうと、無断転用となる可能性があります。
今回は、農地を資材置場として利用する場合の農地転用について、特に注意したいポイントを解説します。
1.資材置場として利用する場合も農地転用が必要です
農地転用というと、農地に住宅や店舗、工場などの建物を建てる場合をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、農地転用とは、農地を農地以外の用途に利用することをいいます。
そのため、建物を建てなくても、農地を資材置場として利用するのであれば農地転用に該当します。
例えば、農地に砂利を敷いて、建設資材や重機、工事用車両などを置く場合も農地転用です。
市街化区域外の農地であれば、原則として農地法第4条または第5条の許可が必要になります。
自分が所有する農地を自分で資材置場として利用する場合は農地法第4条、農地を購入したり借りたりして資材置場として利用する場合は農地法第5条の手続が基本となります。
2.なぜその場所に資材置場が必要なのか
資材置場への農地転用では、「資材置場として使います」と説明するだけでは十分ではありません。
なぜ新しい資材置場が必要なのか、そして、なぜその農地を利用する必要があるのかを説明することが重要になります。
例えば、
「現在使用している資材置場が手狭になった」
「事業拡大により保管する資材が増えた」
「現在の資材置場を返却しなければならなくなった」
「事業所の近くに資材置場を確保する必要がある」
など、実際の事業内容に応じた理由が考えられます。
特に資材置場の場合、住宅のように建物が完成するわけではないため、転用後に本当にその用途で利用されるのかが分かりにくい面があります。
そのため、「将来使うかもしれないので、とりあえず資材置場として農地転用しておきたい」といった計画ではなく、具体的な利用計画を示すことが大切です。
3.必要以上に広い面積ではないか
資材置場への農地転用では、転用する面積についても注意が必要です。
例えば、現在保管している資材がそれほど多くないにもかかわらず、非常に広い農地をすべて資材置場にする計画であれば、「本当にこれだけの面積が必要なのか」という疑問が生じます。
農地転用では、事業を行うために必要な面積であることを説明できるようにしておく必要があります。
そのため、
・どのような資材を置くのか
・それぞれどの程度の量を置くのか
・資材をどこに配置するのか
・車両や重機をどこに置くのか
・場内で車両がどのように移動するのか
などを検討して、必要となる面積を具体的に示していきます。
単に「土地が3,000平方メートルあるから3,000平方メートル全部を資材置場にする」というのではなく、実際の利用計画から必要な面積を考えることが重要です。場合によっては分筆登記も必要になります。
4.何をどこに置くのか配置計画を考える
農地を資材置場に転用する場合には、土地全体をどのように利用するのかを示す配置図などを作成します。
資材置場だからといって、「敷地全体に資材を適当に置く」という計画ではありません。
例えば、
・木材置場
・足場材置場
・重機置場
・工事車両の駐車スペース
・資材の積み下ろしスペース
・場内通路
など、それぞれの利用場所を検討します。
配置計画を作成すると、前述した「本当にこの面積が必要なのか」という点についても説明しやすくなります。
また、大型車両が出入りする場合には、出入口の位置や幅員、場内での転回スペースなども考えておく必要があります。
資材置場への転用では、単に農地を農地ではなくするのではなく、「転用後にどのように利用するのか」を具体的に計画することが重要です。
5.造成や砂利敷き、排水についても検討が必要です
農地を資材置場として利用するために、盛土をしたり、砂利を敷いたりすることがあります。
この場合には、どの程度造成するのかについても計画しておく必要があります。
特に注意したいのが雨水排水です。
農地だった土地に盛土や砂利敷きを行うと、それまでとは雨水の流れ方が変わることがあります。
転用した土地から大量の雨水が隣接する農地へ流れ込むようになれば、周辺の営農に影響を与える可能性があります。
そのため、
・雨水をどの方向へ流すのか
・既存の水路へ放流するのか
・敷地内でどのように排水するのか
・隣接地との高低差はどうなるのか
といった点も事前に確認しておく必要があります。
大規模な造成を行う場合には、農地法以外の法令による手続が必要になることもありますので注意が必要です。
6.周辺農地への影響も審査されます
農地転用では、申請する農地だけを見て許可・不許可が判断されるわけではありません。
転用によって周辺の農地での営農に支障が生じないかについても確認されます。
例えば、
・転用地から隣接農地へ雨水や土砂が流出しないか
・農業用水路の利用に支障が生じないか
・農道の通行に影響しないか
・盛土によって隣接農地との間に大きな高低差が生じないか
などが問題になることがあります。
特に資材置場では、トラックや重機が頻繁に出入りする場合があります。
周辺が農地であれば、農作業に使用する道路や水路との関係についても確認しておいた方がよいでしょう。
7.資材置場は農地転用が完了した後も報告が必要になることがあります
資材置場への農地転用で特に注意したいのが、許可を受けて工事が完了すれば、それですべて終了するとは限らないという点です。
令和6年4月から、資材置場や駐車場など、建築物の建築を伴わない転用については取扱いが厳格化されています。
資材置場などとして恒久的に利用する農地転用については、許可後に工事完了報告を行うだけでなく、その後も一定期間、実際に許可された目的どおりに土地が利用されていることを報告する取扱いがあります。
具体的には、工事完了の報告をした日から3年間、6か月ごとに事業の実施状況を報告することが許可条件とされる取扱いです。
つまり、資材置場として農地転用の許可を受けたのであれば、許可後も実際に資材置場として利用していることが求められます。
「農地転用の許可だけ取っておいて、しばらく何にも使わない」ということは想定されていません。
これから資材置場への農地転用を検討する場合には、許可を取得することだけでなく、その後の利用や報告まで考えて計画を立てることが大切です。
ちなみに、担当者から聞いた話では、資材置き場として転用しておきながら、別の用途(例えば太陽光発電用地)として利用されていた、などの問題が多発したための報告であるということでした。
8.「とりあえず資材置場にしておく」という農地転用は難しい
ここまで説明した内容からも分かるように、資材置場への農地転用では具体的な利用計画が重要になります。
「農地として使っていないから資材置場にしたい」
「将来的に何かに使えるよう、とりあえず農地転用だけしておきたい」
という理由だけではなく、
「誰が利用するのか」
「何を置くのか」
「なぜ新しい資材置場が必要なのか」
「どの程度の面積が必要なのか」
「いつから利用するのか」
といったことを具体的にしていく必要があります。
農地転用は、単に登記上の地目を「田」「畑」から「雑種地」などへ変更するための手続ではありません。
実際に農地を別の用途で利用する具体的な計画があって、その計画について農地法上の許可を受ける手続です。
資材置場への転用を考えている場合には、土地を購入したり造成工事を始めたりする前に、その農地が転用できる農地なのか、計画している資材置場として許可を受けられる可能性があるのかを確認しておくことをおすすめします。
まとめ
農地を資材置場として利用する場合、建物を建てなくても農地転用の手続が必要になります。
また、資材置場への転用では、単に「資材を置きます」というだけではなく、資材置場が必要となった理由、転用する面積、資材の配置、造成方法、雨水排水、周辺農地への影響など、具体的な利用計画を検討する必要があります。
さらに、現在は資材置場など建築物を伴わない恒久的な転用について、転用完了後も一定期間、利用状況を報告する取扱いが設けられています。
農地を資材置場として利用したいと考えている方は、実際に資材を置いたり造成工事を始めたりする前に、農業委員会や農地転用を取り扱っている行政書士などへ相談するとよいでしょう。

