近年、農地に太陽光発電施設を設置するため、農地転用の手続きを行うケースがあります。
一方で、太陽光発電施設の設置については、近隣にお住まいの方が不安を感じたり、設置そのものを好ましく思わなかったりすることもあります。
そのため、実際に太陽光発電施設への農地転用を検討している事業者の方からすると、
「近隣住民の同意がなければ農地転用はできないのか?」
という点は気になるところではないでしょうか。
今回は、太陽光発電施設の設置を目的とした農地転用と、近隣住民との合意形成について考えてみたいと思います。
「農地転用の許可」と「近隣住民の同意」は分けて考える
まず大切なのは、農地転用の許可要件と、近隣住民との合意形成は分けて考える必要があるということです。
農地転用の許可では、対象となる農地の区分や転用目的、事業を確実に実施できるかどうか、周辺農地の営農条件に支障を及ぼすおそれがないかなど、農地法上の基準に基づいて審査されます。
したがって、「近隣住民の一人でも反対しているから、それだけで農地転用が許可されない」という単純なものではありません。
一方で、だからといって、周辺住民への影響をまったく考えなくてもよいということでもありません。
実際の事業では、農地法だけではなく、自治体の条例やガイドラインなどによって、周辺住民への説明を求められる場合があります。
自治体によっては、太陽光発電施設の設置にあたり、近隣住民に対してどのような説明を行ったのか、その経過をまとめた書類などの提出を求められる場合もあります。
また、事業を行う地域によっては、地元自治会等への説明が必要となることもあります。
そのため、太陽光発電施設の設置を計画する場合には、農地転用の手続きだけを確認するのではなく、その自治体に太陽光発電施設に関する条例、要綱、ガイドライン等がないかについても確認しておくことが重要です。
大切なのは「具体的にどのような影響があるのか」
私が特に重要だと考えているのは、太陽光発電施設の設置によって現実に影響を受ける可能性のある方に対して、必要な説明を行い、できる限り合意形成を図ることです。
例えば、太陽光発電施設を設置することによって、
・太陽光パネルによる反射光は問題にならないか
・パワーコンディショナーなどから発生する音は問題にならないか
・雨水の流れが変わり、周辺の土地に影響を与えないか
・工事中の車両の出入りによって生活環境に影響が出ないか
・フェンスや施設の配置によって周辺に影響が生じないか
といった問題が考えられます。
こうした具体的な懸念があるのであれば、事業者側も「問題ありません」とだけ説明するのではなく、どのような対策を行うのかを具体的に説明することが大切です。
例えば、反射光が懸念されるのであれば、パネルの設置方向や角度を確認する。排水が問題となるのであれば、雨水がどこへ流れるのかを確認し、必要に応じて排水計画を検討する。
このように、「何が心配なのか」を明確にして、それに対してどのような対応が可能なのかを一つずつ検討していくことが、本来の合意形成ではないかと思います。
「太陽光発電だから反対」だけでは話し合いが難しい
一方で難しいのが、具体的な生活上の影響とは別に、「私は太陽光発電そのものに反対だから認めない」という意見がある場合です。
もちろん、太陽光発電施設についてどのような考えを持つかは個人の自由です。
しかし、土地の所有者にも、自分の土地を法令の範囲内で利用する権利があります。
そのため、近隣住民との合意形成を考える場合にも、「賛成か反対か」という主義・主張だけで考えるのではなく、
「この施設が設置されることによって、周辺にどのような具体的な影響が生じる可能性があるのか」
という観点から話し合うことが重要だと考えます。
反射光が問題なのであれば反射光について検討する。
騒音が問題なのであれば騒音について検討する。
排水が問題なのであれば排水について検討する。
このように具体的な問題を一つずつ取り上げ、それに対する対応策を検討していくのであれば、事業者側と近隣住民側の双方にとって意味のある話し合いになります。
逆に、具体的な影響とは関係なく、「太陽光発電施設だから絶対に認めない」というだけでは、現実的な解決策を探ることが難しくなってしまいます。
「同意をもらうこと」だけを目的にしない
近隣住民への説明というと、どうしても「同意をもらうこと」が目的になりがちです。
しかし、本来重要なのは、形式的に同意を取得することではなく、事業によって影響を受ける可能性のある人に計画内容を説明し、不安や懸念があれば、それに対する対応を検討することだと思います。
特に太陽光発電施設の場合、設置して終わりではなく、その後、長期間にわたってその場所で事業を行うことになります。
農地転用の許可を取得できたとしても、その後、近隣住民とのトラブルが続いてしまっては、事業者にとっても大きな負担になります。
その意味でも、計画の早い段階で周辺への影響を確認し、必要な説明を行っておくことには大きな意味があります。
農地転用だけで判断しないことが重要
太陽光発電施設を農地に設置する場合、まず「この農地は転用できるのか」という点に目が向きます。
もちろん、それは非常に重要です。
しかし、実際に太陽光発電事業を実施するためには、農地転用以外についても確認しなければならないことがあります。
自治体の条例やガイドライン、景観関係の規制、土地の造成に関する規制、排水、道路、土地改良区との関係など、土地や事業の規模によって確認事項は変わります。
そして、その中の一つとして「近隣住民への説明や合意形成」があります。
したがって、太陽光発電施設の設置を検討する場合には、
「農地転用の許可が取れるか」
だけではなく、
「この土地で実際に太陽光発電事業を行うためには、ほかに何をクリアしなければならないのか」
という視点で計画全体を確認することが重要です。
まとめ
太陽光発電施設の設置に伴う農地転用について、近隣住民から反対意見が出たからといって、それだけで直ちに農地転用ができなくなるとは限りません。
一方で、太陽光発電施設によって現実に影響を受ける可能性のある近隣住民に対しては、計画内容を説明し、具体的な懸念について話し合うことが重要です。
大切なのは、「賛成か反対か」だけで考えるのではなく、反射光、騒音、排水など、具体的にどのような影響が考えられるのかを整理し、それに対してどのような対応ができるのかを検討することです。
また、自治体によっては近隣住民や自治会への説明を求める制度が設けられている場合もあります。
太陽光発電施設の設置を目的として農地転用を検討されている場合には、農地転用の可否だけでなく、関連する法令や自治体の制度、周辺環境への影響なども含めて、計画の早い段階から確認しておくことをおすすめします。

