過去に、一般的な進入路が存在しない農地について、農地転用を検討したことがありました。

当然ながら、農業委員会事務局との事前協議では、「なぜこの農地を転用する必要があるのか」という点について疑問を持たれました。

農地転用では、単に「この農地を○○として使いたい」というだけではなく、その事業計画が実際に実現可能なものであるか、転用する面積や場所がその目的に照らして適切であるか、といった点も確認されます。

その案件では、対象となる農地へ進入するため、通行地役権など必要な権利を確保する予定であることを説明しました。

つまり、法律上も物理的にもまったく進入できない土地というわけではありませんでした。

それでも、「そこまでして、なぜこの農地を利用する必要があるのか」という疑問は残りました。

転用後の用途によって事情は変わる

進入路がないからといって、それだけで直ちに農地転用ができないとは限りません。

重要なのは、転用後の用途との関係です。

例えば、人や自動車が日常的に出入りすることを予定していない施設であれば、一般的な道路に接していないことが、直ちに事業を実現できない理由になるとは限りません。

一方、そのとき計画していた転用目的は「駐車場」でした。

駐車場である以上、自動車が出入りすることが当然に予定されています。

そのため、「一般的な進入路がない土地を、なぜわざわざ駐車場として利用するのか」「駐車場として継続的に利用できるのか」といった疑問が生じるのも無理はありません。

仮に通行するための権利を確保できたとしても、それだけで事業計画全体の合理性まで説明できるとは限らないということです。

「進入できる」だけではなく「その計画が合理的か」

農地転用を検討するときには、「法律上、転用できる農地か」という点だけに目が向きがちです。

しかし、実際の申請では、転用後の事業を本当に実施できるのか、その土地を利用する必要性があるのか、計画している用途に対して土地の条件が適しているのか、といった点も重要になります。

例えば、

  • 自動車や工事車両はどこから出入りするのか
  • 他人の土地を通行するのであれば、そのための権利は確保されているのか
  • 計画している用途に対して十分な幅員があるのか
  • なぜ他の土地ではなく、その農地を利用するのか
  • 転用後、本当に計画どおり利用できるのか

といったことについて、説明を求められることがあります。

農地転用では、「農地法上、絶対にダメではない」というだけでは十分ではありません。

計画に不自然な点があれば、当然、「本当にこの計画で大丈夫なのだろうか」という疑問が生じます。

そのため、農地転用を検討する際には、許可要件だけを見るのではなく、第三者が事業計画を見たときに「なるほど、この土地をこのように利用するのであれば合理的だ」と納得できる計画になっているかという視点も大切です。

特に、進入路がない、土地の形状が特殊である、周辺土地との関係に問題があるなど、通常とは異なる事情がある農地を転用する場合には、事前に農業委員会事務局などと相談しながら、事業の実現可能性について十分に検討しておくことをおすすめします。