「とりあえず農地を買っておいて、あとから何に使うか考えたい」
土地を探している方から、このような話を聞くことがあります。
例えば、将来的に住宅を建てたり、駐車場や資材置場として利用したりする可能性はあるものの、現時点では具体的な計画が決まっていないため、土地だけ先に購入しておきたいというケースです。
しかし、対象となる土地が農地の場合、一般的な宅地などと同じように「とりあえず買っておく」ということは基本的にできません。
農地を農地のまま買うには農地法3条申請の許可が必要
農地を農地として売買する場合、原則として農地法3条申請の許可を受ける必要があります。
そして、農地法3条申請の許可は、単に「農地を所有したい」というだけで受けられるものではありません。
その農地を取得した後、実際に農地として適切に利用することが求められます。
そのため、農地法3条の許可申請では、取得後にどのように農業を行うのかなどについて確認されます。
つまり、
「将来何かに使うかもしれないので、とりあえず農地として買っておきます」
という目的で農地法3条申請の許可を受けることは難しいということです。
「一度農地として買って、すぐ農地転用」はどうなる?
それでは、
「いったん農業をするということで農地法3条申請の許可を受けて購入し、その後に農地転用すればいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、これも注意が必要です。
農地法3条申請の許可を受けたということは、その農地を農地として利用する計画を示して許可を受けたということです。
それにもかかわらず、取得して間もなく「やはり駐車場にします」「住宅を建てます」と農地転用を申請すれば、当初から本当に農業をする意思があったのかという疑問が生じる可能性があります。
少なくとも、最初から農業以外の目的で利用するつもりであるにもかかわらず、農地法3条によって農地を取得し、その後に転用するという方法を前提に土地を購入するべきではありません。
最初から転用する予定なら農地法5条申請
他人が所有している農地を購入し、住宅、店舗、駐車場、資材置場など農業以外の用途に利用する計画がある場合は、原則として農地法5条申請の手続を検討することになります。
農地法5条申請は、農地の権利移転などと農地転用をあわせて行う場合の手続です。
例えば、
「この農地を購入して、自宅を建てたい」
「この農地を購入して、会社の資材置場にしたい」
という場合には、農地をいったん農地として取得してから転用するのではなく、最初からその利用目的に基づいて農地法5条申請の許可を受けるという流れになります。
そして、許可を受けた後に売買による所有権移転を行います。
転用計画がまだ決まっていない場合は?
問題となるのが、
「この土地は気に入っている。でも何に使うかはまだ決めていない」
という場合です。
宅地であれば、とりあえず土地を購入しておいて、後から利用方法を検討することも考えられます。
しかし、農地の場合は事情が異なります。
農業をする意思がないのであれば、農地として取得するための農地法3条申請の許可を受けることは難しくなります。
一方、農地転用を目的として取得するのであれば、「何に転用するのか」という具体的な計画が必要になります。
そのため、
「農業をする予定はない。しかし、何に使うかもまだ決まっていない。ただ土地だけは確保しておきたい」
という状態では、農地を購入することは基本的に難しいと考えた方がよいでしょう。
農地は「買ってから考える」より「使えるか調べてから買う」
さらに注意したいのは、農地であればどこでも希望する用途に転用できるわけではないということです。
農地には、農業振興地域内の農用地区域に指定されている土地や、第1種農地、第2種農地、第3種農地などの区分があります。
農地の場所や周辺の状況、転用目的などによっては、農地転用が認められない場合もあります。
また、農地法上は転用できる可能性があったとしても、それだけで希望する土地利用が実現できるとは限りません。
例えば、住宅を建てるのであれば建築関係の規制、事業用地として利用するのであれば開発に関する規制、造成を行うのであれば盛土に関する規制など、農地法以外の確認が必要になることがあります。
排水先や接道などが問題になることもあります。
そのため、農地を購入して何らかの土地活用を考えている場合に重要なのは、
「まず買って、それから何に使えるか考える」
ことではなく、
「自分がやりたいことに使える土地なのかを調べてから、購入を進める」
ことです。
売買契約を先に結ぶ場合にも注意
実際の農地転用では、農地法5条申請の許可を受ける前に売買契約を締結することもあります。
ただし、この場合でも、通常の土地売買と同じ感覚で無条件に購入してしまうのは注意が必要です。
農地転用の許可を受けられなければ、予定していた土地利用ができなくなる可能性があるためです。
そのため、農地を購入して転用する場合には、農地転用の許可を受けることを前提とした契約内容にするなど、許可が得られなかった場合についても考えておく必要があります。
まとめ
農地は、一般的な宅地などと違い、「とりあえず買っておいて、使い道は後から考える」という購入方法には向いていません。
農地として購入するのであれば、農地として利用することが前提になります。
一方、購入後に住宅、駐車場、資材置場などとして利用することが決まっているのであれば、最初から農地法5条申請の手続を検討することになります。
そして、農業をする予定もなく、転用目的もまだ決まっていないのであれば、土地だけを先に取得することは基本的に難しくなります。
農地を購入して土地活用を考えている場合には、「購入できるか」だけではなく、「予定している用途に転用できる土地なのか」を購入前に確認することが重要です。
農地は、「買ってから考える土地」ではなく、「使えることを確認してから買う土地」と考えておくと分かりやすいでしょう。

