農地転用の許可申請を行う際には、申請書のほかにさまざまな書類を提出する必要があります。
土地の登記事項証明書、位置図、土地利用計画図、資力を証明する書類などが代表的なものです。
ところが、複数の自治体で農地転用申請を行っていると、あることに気づきます。
同じ農地法に基づく許可申請であるにもかかわらず、提出を求められる添付書類が自治体によって異なることがあるのです。
なぜ、このような違いが生じるのでしょうか。
今回は、農地転用申請における添付書類の法的根拠と、自治体ごとに違いが生じる理由について考えてみたいと思います。
1.農地転用の添付書類は法律で定められている
まず、農地転用申請の添付書類は、自治体が自由に決めているわけではありません。
農地法第4条に基づく転用許可申請については、農地法施行規則第30条に添付書類が定められています。
例えば、次のような書類です。
- 土地の位置を示す地図及び土地の登記事項証明書
- 施設や道路、用排水施設などの位置を明らかにした図面
- 事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面
- 転用の妨げとなる権利を有する者がいる場合の同意書
- 土地改良区の地区内にある場合の土地改良区の意見書
このほか、法人が申請者となる場合の書類なども規定されています。
また、農地法第5条第1項に基づく転用許可申請については、農地法施行規則第57条の4第2項に添付書類が定められています。
つまり、農地転用申請に必要な書類には、全国共通の法令上の根拠が存在しているのです。
2.「その他参考となるべき書類」という規定
それでは、なぜ自治体によって添付書類が異なるのでしょうか。
その理由を考えるうえで注目したいのが、農地法施行規則の規定です。
農地法施行規則第30条及び第57条の4には、具体的な添付書類に加えて、「その他参考となるべき書類」という規定が設けられています。
農地転用の許可申請では、土地の状況や転用目的、周辺農地への影響など、さまざまな事情を審査する必要があります。
例えば、駐車場を整備する場合と、大規模な太陽光発電施設を設置する場合とでは、確認すべき事項が異なることがあります。
また、周辺に農地が広がっている土地と、住宅地に囲まれた土地とでは、排水や周辺農地への影響について確認する内容も異なるでしょう。
こうした事情から、法令で具体的に列挙された書類だけでは、許可要件への適合性を十分に確認できない場合があります。
そのため、審査に必要な参考資料として、追加の書類が求められることがあるのです。
ただし、この規定があるからといって、行政庁がどのような書類でも無制限に要求できるというわけではありません。
3.自治体によって添付書類が異なる理由
農地転用の許可基準は、農地法及び関係法令に基づくものです。
しかし、許可基準への適合性をどのような資料によって確認するかについては、自治体ごとの申請要領や審査実務に違いが見られます。
例えば、周辺農地への被害防除について、排水計画図や被害防除計画書などの提出を求める場合があります。
また、土地の利用計画についても、配置図だけで足りる場合もあれば、より詳細な資料による説明が必要になる場合もあります。
このような違いが生じる背景には、地域の農地や土地利用の状況、申請する事業の内容、審査に必要な情報の違いなどが考えられます。
さらに、自治体ごとに申請書類の様式や作成方法が整理されていることも、違いが生じる一因でしょう。
重要なのは、添付書類が異なることと、農地転用の許可基準そのものが異なることは、必ずしも同じではないという点です。
4.法令に明記されていない書類も提出しなければならないのか?
ここで、一つの疑問が生じます。
自治体から提出を求められた書類が、農地法施行規則に具体的に列挙されていない場合、その書類を提出する法的義務はあるのでしょうか。
この問題については、慎重に考える必要があります。
まず、農地法施行規則には「その他参考となるべき書類」という規定があるため、具体的に列挙されていないという理由だけで、直ちに法的根拠がないとはいえません。
一方、自治体の申請要領に記載されているというだけで、あらゆる書類について当然に提出義務が生じるとも限りません。
例えば、追加書類の提出を求められた場合には、その書類がどの許可要件を確認するために必要なのかを考えることが重要です。
また、行政手続法第7条は、申請が行政庁の事務所に到達したときは、遅滞なく審査を開始しなければならないと定めています。
法令に定められた申請の形式上の要件を満たしていない場合には、補正を求めるなどの対応が規定されています。
したがって、追加書類が提出されていない場合でも、それが法令上必要な添付書類の不足なのか、審査のための追加資料の不足なのか、あるいは行政指導として提出を求められているものなのかを区別する必要があります。
もちろん、必要な資料を提出しなければ、許可要件への適合性を確認できず、結果として許可を受けられない可能性もあります。
そのため、単に「法律に書いていないから提出しない」と考えるのではなく、書類を求める理由と必要性を確認することが大切です。
5.農地転用申請では事前確認が重要
農地転用申請の添付書類は、全国共通の法令に基づく部分と、個別の事情に応じて必要となる部分があります。
そのため、ある自治体で申請した際の書類を、そのまま別の自治体で使用できるとは限りません。
また、同じ自治体であっても、転用目的や土地の状況によって必要な資料が異なることがあります。
農地転用を円滑に進めるためには、提出先の農業委員会などに事前確認を行い、必要な資料を整理しておくことが重要です。
特に、複数の都道府県で事業を展開する企業にとっては、地域ごとの申請実務の違いを把握することが、事業計画を進めるうえで役立つでしょう。
まとめ
農地転用申請の添付書類が全国一律ではない理由の一つは、法令で定められた書類に加えて、個別の許可要件を確認するための参考資料が必要になる場合があるからです。
もっとも、自治体によって添付書類が異なるからといって、許可基準まで自由に変更できるわけではありません。
また、行政庁が追加書類を求める場合にも、その必要性や法的根拠について検討する余地があります。
農地転用申請では、何の書類を提出するかだけでなく、なぜその書類が必要なのかを理解することも重要なのです。
当事務所では、鳥取県・島根県を中心に農地転用や土地活用に関する許認可手続きを取り扱っています。
農地転用についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。

