以前お話した「相続人の確定」ということに関して、影響を与える3つの要素について、お話をしたいと思います。

相続放棄・・・相続放棄は、熟慮期間(相続人が被相続人が亡くなったことを知った時から3か月以内)に、その旨を家庭裁判所に申述して行います。相続放棄は、各相続人が単独で行うことができます。また、遺言で被相続人が相続放棄を禁止したとしても、行うことが可能です。相続放棄に条件を付すことはできません。効果としては、最初から相続人ではなかったことになります。つまり、被相続人についての権利、義務の全てを引き継ぐことがなくなります。被相続人の相続にかかわりたくない、又は、被相続人の遺産に借金などのマイナスの財産の方が預貯金などのプラスの財産より多い場合などに行うことになると思います。

相続欠格・・・相続欠格とは、相続人となるものに次の①~⑤の重大な非行があった場合に、その者の相続権をはく奪することです。相続欠格に該当する者は、相続人になることができません。

①故意に被相続人又は相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者

③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

⑤相続に関する被相続人の遺言を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

上記①~⑤にはそれぞれ細かい内容がありますが、長くなるので別の機会にご説明したいと思います。

推定相続人の廃除・・・廃除とは、遺留分を有する推定相続人(相続が開始したときに相続人となる者)が被相続人に対して虐待や重大な侮辱等を行っていた場合に、被相続人の請求によって、家庭裁判所の審判を経てその者の相続資格をはく奪する制度のことです。遺留分を有する推定相続人とは、被相続人の配偶者、子などの直系卑属、両親や祖父母などの直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分はありませんので、廃除をすることはできません。もし、同じような理由で兄弟姉妹に相続財産を渡したくないという場合は、遺言書を作成して遺産を兄弟姉妹に渡さない内容にしておけば、遺留分がないので遺言書の内容で相続、遺贈させることができます。遺留分とは、上記の遺留分のある推定相続人が最低限受け取れる相続分の事です。廃除は、生前に行うこともできますし、また、遺言によっても行うことができます。生前廃除は、被相続人が自ら家庭裁判所に請求します。遺言廃除は、遺言執行者が遺言の効力が生じた後に遅滞なく、家庭裁判所に請求します。家庭裁判所において廃除の審判が確定したときは、廃除された者は、当該被相続人に対する相続権を失います。廃除された者は、遺留分を受け取ることもできません。廃除は取り消すこともでき、生前にもできますし、遺言でも取り消すことが可能です。生前の場合は、被相続人がいつでも家庭裁判所に取り消しを請求でき、遺言の場合は遺言執行者が家庭裁判所に取り消しを請求します。

上記の中で一番ご相談が多いのは相続放棄だと思います。基本的には家庭裁判所のホームページを確認して必要な書類に記入して添付書類とともに申述すれば良いですが、どうしてもご自身でできないという場合は司法書士に作成を依頼するのが良いと思います。当事務所にご相談していただいても適切な専門家に繋ぎますので、お気軽にお問い合わせください。